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シーサーの日なので。

4月3日はシーサーの日です。
毎年この日は獅子(シーサー)についてあらためて考えてみる日にしています。
そして今年は、私たち育陶園のシーサーづくりの歩みを振り返ってみることにしました。

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私たち育陶園は、シーサーと器を中心に壺屋焼の製作をしています。

もともとのルーツは"荒焼(あらやち)"でしたが、苦しい時代の中
荒焼では食べていけず、
先代で私の祖父"高江洲育男"の時代から、"上焼(じょうやち)"へと変わっていきました。

高江洲育男.jpg

先代の育男は、片足を悪くし、蹴りロクロが困難だったということもあり、
"シーサー職人"として生きることを決めました。
島袋常恵氏と小橋川永弘氏、二人に師事し、その後独立、【育陶園】をつくりました。
とても勉強好きの人で、県外、海外(中国・台湾など)へも趣き、
シーサーの見識を深めていき、たくさんのシーサーを生み出しました。

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また、とても先進的な人でもあり、
壺屋で登窯が焼けないとなると、この地に残るため、
いち早くガス窯、灯油窯を導入した人といわれています。
そして若い頃、大阪や満州で育ったということもあり、
外からの人を受け入れ、初めて県外の弟子をやとたっともいわれています。
この頃から育陶園は、いつも【若者、ばか者、よそ者】が集まり、賑やかだったと聞きます。

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祖父はやさしく、大らかで、そして紛れもなく"獅子職人"でした。
生きるため、自分という存在を表現するため、病気で床に伏せるまで獅子を作り続けました。

祖父の獅子はいつも凛として、それでいてどこかやさしく、親しみやすさがあります。
よく「作り手に獅子は似る」と言いますが、本当にその通りだと思います。

祖父はその功績を認められ、伝統工芸士、そして"現代の名工"となり
64歳の時黄綬勲章を受賞しました。
また、祖父の働きは、獅子職人としてだけに留まらず、組合、町民会の代表も努め
組合員の為、地域の人のため、いつも【壺屋の発展を考える】人でした。

そんな祖父が67歳の若さでこの世を去りました。

大きな存在の祖父を早く失った私たちは、
当時、本当に厳しく、誰にも頼れない状況に立たされました。
中学生だった私でも、その危機感を両親からヒシヒシと感じたものです。

そしてその中でも一番大変だったのが、残された若い獅子職人たちでした。
中心であり、目指すべき人を失った現場で獅子を作っていくということは
とても難しく、困難で、壁にぶつかる日々がはじまりました。

父のいるロクロ工房とも離れているため、
余計に疎外感と不安が工房をおそいます。

自分たちは何のために獅子を作っているのだろう?

日々大量の獅子の注文に追われているとそんな疑問が浮かんできます。
工房ではよくぶつかり合ったり、激しいケンカもありました。

でもそれは"真剣"だったから。
真剣だからぶつかれた。

育陶園の目指す獅子とは何か議論しながら、
あらためて皆で獅子について勉強し、
原材料や作り手の原因で
品質が落ちてしまった時もどうにか皆でチェックする仕組みを考えたり、
原料の配合、窯の焼き方を変える取組を行ったり
そんな日々を繰り返しながら、
気が付けば祖父がいなくなって20年。
私たちは今もしっかりと、獅子をつくっています。

そんな20年を知っている私は、
今が一番、良い獅子づくりができていると自負しています。
そして私はそんな、真剣なみんなが作る獅子が大好きです。
どこへ出しても恥ずかしくない、自信を持ってお客様にお届けできるシーサーだと思っています。

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"家族や地域を大切にする沖縄の人の心"それがシーサーだと思います。
だからこそ家族や地域を守る魔除けとなるよう、
そしていつも近くでよりそう、家族のような存在になるようにと。
想いをこめて、真剣に、そしてモノづくりを楽しんで作っています。


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獅子作りが好き。良い獅子を作りたい。格好良い獅子を作りたい。
だから日々生まれてくる獅子と向き合い、課題が見つかると
皆で考え検証し、改善していきます。
【良いシーサーが作りたい!すべてはその獅子を置く人々のために】それがみんなの共通の思いです。


そして今工房では、"育陶園"というひとつのチームとしてのモノづくりができるようになりました。
"個人"という色が強いこのものづくりの世界で、チームで作るということはそう容易なことではありませんでした。
とくにこの10年は、激しくぶつかり、失敗しながらの日々で
10年経ってようやく、今のこのチームに辿り付きました。

大まかな流れとしては、型抜き→組立→仕上げ→そうじ&検品→絵付け→窯焼き→窯出し&検品となりますが、
数人でこの仕事を受け持つので、どこかでミスが起こると、すべてに影響してしまうのです。
最後の仕上げを想像しながら、最初から最後まで集中して、次の人へとバトンを渡していく。
それが育陶園の獅子づくりのスタイルです。

そして"顔"や表現も、育陶園の凛として、力強く、それでいてどこか優しい。そんな獅子を意識しながら
自分たちの"個"を薄めながら、皆で一つの獅子を作り上げます。

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そしてたまに、自分たちの培った技術や表現力を出した自分の色の獅子を作る。
最近ようやくそんなメリハリのついた仕事ができるようになったと思います。
ここからまた、新しい育陶園の獅子スタイルを作り上げていけそうです。

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祖父が亡くなって20年。
でもその存在がなくなることはありません。
祖父に触れたみんなが、
この壺屋で獅子を作り続ける限り。

振り返ってあらためて、私たちの獅子づくりの原点を心に置き、
そしてこれからのスタートをどう進んでいくか、そんなことを考えるきっかけとなった
【シーサーの日】でした。


(2015年4月 3日)



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