お便り

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2019.2.15 育陶園のこと

【職人・康雄さんのつぶやきから】

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【職人・康雄さんのつぶやきから】

「1個のポットを作るより、カップを一板分作ったほうが早いよぅ。」
ロクロを回す手を休めた康雄さんが、土から形になったばかりのポットのまん丸ボディを優しくさすりました。
「うんうん。」と、隣でロクロでカップを作っていた誠さんが ニヤリ。
モノによってちがうのですが、"棚板"とよばれる作品を管理する板には、一板あたり、ポットならば7個、カップなら20個ものせることができるそうです。ちなみに今回の製作予定は、ポットを5つと急須が2つで一板分。

「最近、集中力がなくなってきたのかなぁ。」と、ボディの形を整えるため再び削り始めました。毎月400個もの器を作っている、育陶園歴30年のベテラン職人さんでもつぶやきたくなるようです。というのも、ボディとふた、注ぎ口、持ち手、さらには茶漉しといった、たくさんのパーツを土からひとつひとつ作り、組立てていくのです。なので、お皿やコップに比べて手間がかかかるそう。
 数時間後、子どもたちをお迎えしてから工房へ戻ると、今度は茶漉し用の穴をあけて、注ぎ口をつけるところでした。もう、子どもが見ても「ポット」とわかるカタチになっています。
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 そして二日後に、とうとう釉薬をとっぷりコーティングされて、扇風機の下にずらっと並べられたポットたち。
ついに完成まであと一息ですね!と思ったら、これから唐草文様を線彫りだそうです。ポットだけでなく、いろいろな器を並行して作っているそうですが、康雄さんを見る度にポット・ポット・ポットづくしのように見えました。でもそういった器ほど、気持ちを込めて夢中になれるそうですよ。
成形から組立てまでが約一週間、そして窯へ。(乾燥具合が天気にもよりますし、土作りや釉薬つくりなどもありますね!)

そんな過程をみた後日、お店にならんだポットから笑ってる康雄さんのつぶやきが聞こえてきたような。

淹れて楽しむ"やちむん"となるまでの道のりを思うと、お茶の時間がさらに味わえそうです。   (朋美)
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