壺屋のまちで、長くやちむんが焼かれてきたことを今に伝える登り窯のひとつ、
アガリヌカマ。
かつては実際に火が入り、やちむんを生み出してきたこの窯も、
那覇の市街地化が進み公害の問題が生じたことから、
四十年ほど前から登り窯として使い続けることができなくなりました。

この窯は、新垣家住宅とあわせて国指定史跡「壺屋焼窯跡」として保存されています。
火を扱い、土と向き合い、暮らしの中で焼き物を生み出してきた
壺屋焼の営みそのものを伝える場所です。
アガリヌカマは、新垣家に伝わる上焼(じょうやち/施釉陶器のこと)用の登窯として、
1974年まで実際に使われていました。
2002年には、新垣家住宅全体が国の重要文化財に指定され、
その価値があらためて認められます。
しかしその後、老朽化や大雨の影響により、
2009年、アガリヌカマは全壊してしまいました。
崩れ落ちた窯は、
「壺屋のやちむんの歴史を伝える、かけがえのない存在」として、
資料や記録、関係者の記憶をもとに、丹念に復元工事が進められました。
そして2015年、かつての姿を再現する形で、アガリヌカマはよみがえります。
復元された窯は、全長約23メートル、幅約4メートルの登窯。
排煙口を除く全体が赤瓦の屋根で覆われ、窯の内部は、火口から三房目までが実際に焼き物を焼ける状態で再現されています。

復元は、完成がゴールではありません。
登り窯は、使われなくなると湿気がこもり、構造そのものが弱っていきます。
そのため、アガリヌカマでは、保存のために定期的な「焼き締め修繕」が行われています。
内部に火を入れ、窯の強度を高めるこの作業は、文化財として登窯を維持していくために欠かせない工程です。
今年も、夜間を除く三日間にわたり、
ガスバーナーを用いた焼き締め作業が行われています。
アガリヌカマは、崩壊から復元、そして現在に至るまで、地域の有志による地道な活動によって守られてきました。
年に一度の焼き締め作業も、準備から火の番、片付けまで、多くの時間と手間がかかります。それでも、壺屋東ヌ窯保存会のメンバーが力を合わせ、この窯と向き合い続けています。
育陶園も、保存会の一員として、職人がこの作業に関わり、協力しています。


アガリヌカマに入る火は、
「器を焼くための火」ではありません。
けれどそれは、
壺屋で焼き物が生まれてきた歴史を、
行為として未来へ手渡すための火です。
窯を遺構として残すだけでなく、
火を入れ、人が関わり続けることで守る。
その積み重ねこそが、
壺屋でやちむんが作られてきた確かな証であり、
この場所が、これからも生き続ける理由だと、私たちは考えています。

※アガリヌカマは、保存と活用の両立を大切にしながら、一般の方も見学できる文化財として公開されています。
実際に窯の前に立つと、写真や文章だけでは伝えきれない土の厚みや、登り窯の大きさ、
そして積み重ねられてきた時間を感じることができます。
【アガリヌカマの公開日時】
金・土・日・祝日(一部除く)
13:00〜17:00
育陶園 本店 から徒歩約3分。
壺屋のまち歩きの途中に、
ぜひ立ち寄っていただきたい場所です。







